ピリカヌプリヌピナイ川左股川〜右股川(下降)

2001年8月12〜14日

金澤弘明 松澤誠吾 大原成雄(札幌北稜クラブ)

 

8月12日

 昭徳右岸林道を終点まで行き、入渓。
河原を歩くがなかなか二股に着かないし、どうも地形図と様子が違う。
そうこうしているうちに札幌登攀倶楽部パーティーに追い付かれ、既に熊の沢(左股川)に入っていることを知らされる。
林道を走っているうちにあんな大きな二股を見落としてしまったらしい。

 沢はC465mより函状になり美しい滑床がしばらく続く。
特に困難な部分は無いが、トヨニ北面直登沢を分け
655m二股手前で一箇所だけロープを出す。

 655m二股(三股と呼ばれている)で狭い河原を整地し、設営後、大滝のルート工作に出る。
750m二股には崩れそうな雪渓が残っているが中を通り右股に入る。
すぐに
12mほどの滝があり、金澤リードで左岸からV+。
その先の雪渓のトンネルをくぐると左からほぼ垂直に落差
50m以上ありそうな大滝が落ちてくる。
通常は正面のルンゼから左岸を高巻くか左岸を直上するようだが、右岸、垂直のジェードルから登ることにする。
取り付きでハーネスを付け気合を入れたその時、
バシーンという爆音と共に今しがたくぐり抜けて来た頭上の雪渓が崩落してくる。

大原の視線で全てを悟る、

ヤバイッ!

ドドーン!

・・・振り返ると自分が今まで立っていた
1m先から百tはあろう氷雪塊が沢を埋めていた。


 気を取り直しかぶり気味のジェードルから垂直のランペを行くW+、薄刃のバガブーが有効だ。
クロモリをがっちり効かせ、「頼むよ」と一声掛けハングを右にハンドトラバース(X+)しカンテに出る。
重いロープを
45mいっぱい伸ばし、フォローの大原をあげる。
6
〜7m左下の草付レッジに降り、リングボルト2本打って9mmロープをフィックスする。
 ハーケン4枚使用(内
1枚を残置)。
下では松澤が寒そうに震えて待っていた。


 

0900380m入渓−1025465m−1225586m二股−1355655m二股1500−大滝ルート工作−1820655mC1


 

8月13日

 前日のフィックスをプルージックで登り返す。
函の中に大小の滝が連続するがいずれもV程度までで、難しいものはない。
が、大きな滝では全てロープを出していく。
C1000m手前で雪渓となる。1040m二股は合流点で雪渓が切れていて、左岸小尾根から巻き上部大雪渓に移る。
1130m二股付近は雪渓の下だが主稜線からの沢も合流し、雪渓が大きく広がっている。
右端のが頂上への沢だ。
シュルンドを跨ぎ大原リードで左岸より左斜上していくW。
さらに幾つか滝を登ると函地形が消えゴーロになる(ビバーク可能)。
少し先で沢は再び函になり、
20m位の黒くて脆そうな滝が見える。
すぐ手前にヤバそうな小雪渓があるのと大原の「滝はもう飽きた」との一声で右岸から高巻くことにする。
登り始めの
50mが悪い。
ここで追い付いて来た登攀Pと合流し一緒に頂上を目指す。
側壁が高くなかなか沢に降りられず、きつい笹の藪を漕ぐこと
1時間あまり。
1380m、スラブ壁の上端付近に6mの懸垂で沢に降り立つことができた。

 スラブ壁左上の枝沢を詰めると源頭となり、お花畑からハイ松を少し漕ぎ、ピリカヌプリ頂上南の主稜線に出る。
頂上からは少しの間だったがソエマツ、神威、遠く東西稜線まで望むことができた。


 

05201発−0620大滝下−1305大雪渓上端−14551260m−16201380m−1730ピリカヌプリC2


 

8月14日

 登攀Pと一緒に朝食しているといきなり地面が揺れだした。
山で地震に出くわしたのは初めてだ。
見下ろす上二股は遠く、中年パーティーは少々お疲れだった。
ソエマツは割愛してまっすぐ下ることにする。
右股川は中流部の高巻きが悪くなかなか緊張から開放されない。
河原に出てからのんびりのんびり下る。

 


065520900上二股−1105540m屈曲点−1345下二股−1410林道終点

参考グレード 左股川 4級、右股川 1級上(巻道使用)

 

(金澤弘明)