豊似川左股川〜幌別川ピリカヌプリ南面直登沢〜豊似川左股川(下降)

2003年8月13〜16日

L田中規雄 金澤弘明

 

台風10号による災害でぺテガリ林道はもちろん、日高側の林道はほぼ全滅状態でルートの変更を余儀なくされた。
十勝側からの入下山で田中がいろいろ考え提案してくれるが、
どれもイマイチ納得出来ず、計画段階で一方的に田中に迷惑をかけてしまっていた。
周囲が生活圏の復旧に追われるなか、山に遊びに行くという。
さすがに妻にも「今回は止めたら」と言われてしまった。
田中は焦っていたに違いないが、後ろめたい思いがある私には自分を納得させる必要があったんだ。

ようやく計画が確定したのは出発前日、12日の夜だった。
1933分、占冠駅で田中と合流、狩勝峠、芽室経由で広尾へ。
霧雨の豊似下二股の駐車帯には
11時過ぎに到着。


 

8月14日

 緑雲橋に車をデポし橋の脇を下降。
小雨の中、左股川を遡る。
速いペースで登っていくが、源頭部で記憶に無い右股に入ってしまった。
ブッシュを少し漕いで東峰とのコル付近に出る。
南峰まではかすかな踏跡とハイマツ漕ぎだが時間的に大差は無い。

ピークの北側直下、一段落ちた所から幌別川に下降開始。
草付から始まりすぐに浮いたガレ沢となるが、注意していても落石を出してしまうほどの急傾斜だ。
田中が警戒して間隔をあけて下ってくる。
途中、
20mほどのルンゼ状の滝では少し脅かされた。

ガレは延々とC750m付近まで続き、そこから徐々に河原状に変わり、628m二股からは平凡な河原となる。
ようやく晴れ間も見え出し、まだ水に濡れた新鮮な熊の足跡を見ながら
348m二股に下る。

まだ時間も早いので、明日の長丁場を考え480m二股を目指す。
南面直登沢は
400m二股から函状になる。
滑床と白いゴルジュを越えると間もなく、釜を持った二段トイ状の滝に出合い左岸を巻く。
函の中にはさらに幾つか釜持ちの小滝が見え、そのまま側壁をトラバースし、終えたところが
480m二股だった。
明日の行動に備え焚き火もせずに早々に寝に着く。

 

0610行動開始−1000トヨニ南峰−1315 348m二股−1625幌別川480m二股C1

 

8月15日

 テン場を出るとすぐに狭い函地形に変わる。
小滝をこえるとトイ状の釜持ち小滝が連続し右岸を低く巻く。
続く釜持ちも右岸を巻き
7mの懸垂。
二段トイ状
10m、釜持ち小滝と続けて右岸を低く巻き、7mトイ状をへつる。
連続した小滝を右岸から巻き
8mの懸垂で沢身に下りると間もなく631m二股となる。
ここまで狭い函が続き、微妙なへつりと小さな巻きを繰り返す。
滝は大きくはないがトイ状の釜持ちが多く、頑張れば中を行けそうなものもあるが、低く巻くほうが疲労も少なく早い。

核心の40m大滝は田中リードで右岸を登る。
支点が取りづらいリッジ状から草付のルンゼ状。
ザイルいっぱい伸ばし草付帯のレッジでビレイV
+
悪い草付きを右に一段上がりブッシュ帯をトラバースし、懸垂
20mで沢に降り立つ。
やや沢は浅くなり
25m斜滝の左岸を快適に登り15mを右岸から越えると860m右屈曲部。
ここから突然ガレが沢を埋めるように続いている。
所々で滑滝が顔を出しているが、このガレは延々源頭まで続いている。
ガレの下に水の流れる音が聞こえるが、
1170m二股で水を取り損ね、
下り直さなければならないかと覚悟した頃、運良く左岸のルンゼ内にか細い水の流れを見つけることができた。
1300m付近からますますガレは傾斜を増し、崩れやすく危険なものに変わっていく。
不安定なガレを避け、左岸岩壁基部をトラバースするように詰めていくとようやく草付帯に変わり、
間もなく国境稜線の
1520m付近に出る。
ヤブ漕ぎは無い。
1170m二股を左にとると直接頂上に出られるようだ。

稜線上は風が強く雨、視界数10m。
ピリカ頂上まで
30分位と思われるが天候の回復は望むべくも無い。
吹きさらしの頂上にテントを張る気にもなれず、トヨニに向け稜線を強行することにする。


 ピリカ〜トヨニ間の国境に縦走路は無いが、
稜線の日高側にかすかな踏み跡と獣道が部分的にあり、心配していたほどひどい状態ではなかった。
それよりも行けども行けどもテン場が無い。
日没まであまり時間が無いうえに鋸を忘れてしまっていたのでテン場を作ることも出来ない。
これはもうヘッドランプで北峰まで行くしかあるまいと覚悟を決めた頃、
北峰近くの稜線ヌピナイ側にテン場を見つけることが出来た。

 

05202発−0840大滝落ち口−1140稜線−1525 C1440mC2

 

8月16日

 まだ陽も昇りきらぬ早朝、枕元の甲高いシカの鳴き声で目を覚ます。
昨日までの天気が嘘のような晴天だ。田中曰く、「下山性高気圧」というらしい。
テン場はトヨニ北峰の西側直下のコル、C
1440m地点。
シカのヌタ場のような所だが北峰ピークのサイトより数段快適なものだった。

北峰、南峰へと踏み跡をたどり、豊似左股川を下る。
途中懸垂
3回。
530m二股で濡れ物を軽く干した後、車デポに戻る。


 

05353発−北峰0555−南峰0705−緑雲橋1030

参考グレード トヨニ左股川 1級上、幌別川トヨニ南峰西面直登沢 1級上(下降)

幌別川ピリカヌプリ南面直登沢 3級上

 

幌別川は豪快さはあまり無いが、沢筋は細くしっかりしたルートファインディング力を要求される。
核心部は比較的短く、上流部はガレが長く続き、遡行の興味がそがれてしまう。

 

(金澤弘明)