ソエマツ沢ピリカヌプリ北西面直登沢

 

ピリカヌプリ北西面直登沢〜春別尾根下降

2004年8月14〜15日

L金澤弘明 大原成雄

 

8月14日

 二人とも足の調子がイマイチで長い山行には不安があり、それならと沢例会のリベンジマッチをやることになった。

 前回と同じ車デポ地からはアプローチ用にと運んできた自転車にまたがる。
担いだり押したりする場面も結構あるが、やはり早い。
先行Pがあるようなので終点近くの笹薮の中に自転車を隠し、
15分ほど歩くと入渓地点となる。
林道終点には先行Pのアプローチシューズがデポしてあり、3人Pのようだがどこに入るのだろう?
ダブらなければ良いが。

 404m二股から沢は少し荒れるが河原が続き、C650より函地形となる。
それほど悪相ではなく中を進むことができる。
700付近の逆くの字20m滝は左岸をへつり、ルンゼからトラバースする。
以前の記録では
770mより上にはテン場適地が無いと書いてはあったが、まだビバークには時間も早く先へ進むことにする。

その後の2〜5mも全て中を行き、共に10mCSの220mは右岸を高巻く。
890m三股の手前20mは直登し、落ち口で水を被る。
890m三股にはまだ少し雪が残っていた。
ここはガレの堆積地になっていて、この小高い所を土木工事しテン場を作る。
薪もあり、なかなか快適なBPである。
盛大に焚き火をし、明日の天候と春別尾根の下降に思いを巡らすが、
順調に進めば明日中に下山することも出来るだろうし、計画ではもう一日余裕があるのだから焦る必要は無い。

 

0930車両デポ−1115入渓−1150404m二股12201330650m−1515890m三股BP

 

8月15日

 核心部は過ぎたかと錯覚させるゴーロを少し行き、920m三股を左にとると2段30mの滝。
下段
20mは左岸を直登し上段釜のテラスまで行くが、ここからは確保がなければ無理なようだ。
さっきまで「この沢ならロープは要らないね」などと言っていたが、さすがにそこまで甘くはなかったようだ。
狭いテラスでギアを付け、右岸を6m直上後右トラバース。
残置はあったが使えない、ハーケン2枚使用。

 この後20mと10mを小さく巻くと核心部は終了し、ガレ沢となる。
このまま詰めると国境稜線C
1420m付近に出るのだが、それでは「直登沢」としては弱いので、1190m二股を右に入る。
すぐに二股となり左に進むと頂上西の肩に突き上げるはずなのだが、その二股が出てこない。
沢筋なりに進みC
1330を左、C1410も左にかすかな沢形を追うとそのうちヤブ漕ぎ状態となり、
春別尾根のC
1570m付近に出た。

 C1240辺りの右岸にチョロチョロ流れるスラブ滝があり、それを行くのが正しかったようだが、
源頭の急斜面のヤブはちょっとやる気を起こさせない代物だ。
特にこだわりがあるのでもなければ、素直に
1190m二股を直上し国境稜線に出るのが正解だ。

 尾根にザック1個と不要品をデポし、頂上に向かう。
頂上からは遮るものの無い
360度の視界を堪能する。

 下降する春別尾根には途切れがちながら獣道が発達し、所によっては一般道顔負けの状態になり歩きやすい。
しかし視界は限られ、ルートファインディングは難しい。
沢形や尾根筋が地図に表現しきれない「面」から派生しているので、
獣道を追うことに意識が行っていると失敗する。途中、何度か深い笹薮をトラバースして軌道修正する。
1030付近で左側が「面的」になったので、トラバースし尾根筋に戻ろうとしたが、
滑り落ちそうな笹の急斜面に阻まれ下のルンゼに追いやられる。
「仕方ない、このまま降るよ」

 狭く立ったルンゼを落石に注意しながら降ると、雷鳴に続き雨が降ってきた。
ロープを出すほどではないが気を抜けるところが無く、下に降るほど微妙なクライムダウンになる。
750mで支沢に合流後、8m滝の左岸をクライムダウンするとガレ沢となり、C630mで本流に合する。

 雷雲が通り過ぎる度、降ったり止んだりを繰り返す中、林道終点まで河原を歩く。
どうやら今日中に下山できそうだ。

山を振り返ると、大原の頭上に美しい2重の虹が掛かっていた。
近づき遠ざかる雷雨の中、車目指して快調にペダルを踏みだした。


 

0530行動開始−07301190m二股−0930ピリカP10001130春別尾根C13001345支沢C760m−1445本流630m二股−1610林道終点−1740車両DP

 

参考グレード 3級上

 


 北西面直登沢は核心部も短く、全体として威圧感も大きくは無い。
技術的にはそこそこに難しい沢でもあり、かつ快適な沢でもあるので、
これからより上級の沢を目指そうとする者にとっては良い対象であるにちがいない。
春別尾根の下降は読図が難しく、GPSの使用は有効だろう。
濡れた笹斜面のトラバースは危険と言っても良い代物で、思い切って沢に降るくらいのつもりがあって良いだろう。

 これでピリカヌプリへ至る主要な4本全てを含む、南日高三山で目標としていた沢筋のトレースを終えることができた。

 

 (金澤弘明)