GW例会 利尻山東稜 感想

柏本 修平

54日 
 その日、柏本は朝からとても調子が良かった。
 体力的にも前日の疲れはほとんど残っておらず、
サクサク歩けていたし、水や行動食もいつもより進み、
天気も良く、なんかいつもより難しいところも登れそうな気がしていた。


 そんな訳で、本峰直下でザイルを出す時、睦男さんから
「カッシーリードしてみるかい?」と言われた時には迷わず
「やります」と答えていた。

 事前にどの先輩に聞いても
「大丈夫だ」「ザイル出さなくてもいいぐらいじゃないか」
等の意見だったし、
一見したところさっき登ってきた斜面と大差無さそうだったし、
前パーティもあっさり登れていた様子だった。
 とにかく、軽く見ていた。
 よく考えたら雪壁をリードするのはこれが初めてだったというのに。


 ザイルをつけ、取り付いて少し登ると岩肌が露出していたので、
ランニングを取ろうと支点を探す。
 ハーケンぐらい無いものかと探したが、見つからず。
 持参したハーケンを打つ事にした。
 なかなかいい音で刺さっていくので良く効いているものと思っていた。
 が、実は「全然効いて無かったよ」と後に睦男さんは語ったが。
 そんなこととは思っていなかったので、ランニングを取れて一安心しながら前進。
 
 雪が多く、温かく、グサグサで非常に登りにくい。
 一歩踏み込んでは足場が崩れ(その度に下の二人は冷や汗ダラダラ)、
バイルは刺しても刺しても効かず、体力はどんどん削られていく。
(自分で勝手に削っているのだが。)
 じゃまな上部の雪を落としながら、落とした雪で足場を固めて登っていく、
なんだか凄く効率の悪い登攀をしていた。
ものすごい時間をかけて、やっと途中のテラス状の場所に出る。


 テラスで再びランニングを求めて作業を始める。
「どっかその辺にハイマツとかないかー」
 睦夫さんの声が聞こえる。
 枝葉一本見えやしない、真っ白だ。
 なんとなくハイマツがありそうな辺りをピッケルのブレードで掘る、
掘る、
掘る、
まだ出ぇへんのかい!!
やっと小さな枝が出てきて
「あった♪」とビレーヤーに向かって叫んだ私の声は相当喜びに満ちていたことだろう。
 ランニングをとるにはそこから更に掘りつづけなければならなかったのだが。

 


 そこからトレースどおりには進めそうに無かったので(無論実力不足で)、
なんとなく右方面に斜上してみた。
 これがまた物凄いグサグサの雪で、これまで以上の作業を要求された。
 わざわざ雪の多い方へ、多い方へ行っていた様な気もする。
 ルートファインディグ能力を養うのが課題だな、と今では思うわけだが、
そん時は必死で、どうやら何か叫んでいた。
「泣きそう!」とかなんとか。

 そんなこんなで、なんとかかんとか落ちずに終了点にたどり着き、ビレイ。
 チラッと時計を見ると、最初に取り付いてから
2時間半が経過していた。
 んー。
 未熟。

 セカンドの小田さんが登り初めて少し経った頃、
登攀クラブのパーティが取り付いたらしく、
「先に行ってもらう」旨を聞いたと思ったら数分後にはY野氏が登りきっていた。
 流石に早い、ていうか俺が遅すぎるんだ。等と軽く落ち込んでいると、
「今年は雪が多いから厳しいよね」みたいなことを言って頂け、結構慰められた。


 小田さんも結構てこずり、
1時間15分かけて登って来、睦男さんはさすがに15分で抜けてきた。
 全員が登り終えた頃には始めの晴天はどこへやら、辺りはすっかりガスに覆われていた。
 誠に、危険個所での行動はスピーディーに行いたいものである。


 今回の反省はなんと言っても冬期登攀の訓練不足と思われる。
 もっと上ホロなどでもプレ合宿を行うべきだっただろうし、利尻で初リードというのもおかしな話だ。
 しかし、そんな反省も含めて、今回は非常に得るところが多い、充実した山行だった。
 また行くぜ、利尻!!