札内川七の沢〜コイボクシュシビチャリ川本流

 

札内川七の沢〜P1823〜コイボクシュシビチャリ川本流〜カムエクイエクウチカウシ山〜札内川八の沢

2005年7月28〜31日

L金澤弘明 千葉芳弘

 

7月28日

 直前に台風が接近、進路は東にそれたが念のため前日夜、道路状況を確認したところピョウタンの滝のゲートで通行止めとのことだった。アプローチに自転車も使うことにし、予定通り入山し、道々静内中札内線作業道終点近くの広場にテントを張る。流木が豊富で盛大な焚き火を前に、満天の星空を見上げながらの酒が進む。

 

ゲート前駐車場16201655七の沢出合い−1730 C650m作業道終点付近C

 

7月29日

 道々の作業痕跡はC680m付近まである。狭い河原を750m二股まで進むと、ここから先は渓相が一変する。屈曲したゴルジュ状の函滝を超えるといきなり雪渓になる。これを降りるとまたすぐに雪渓。中間で一度くびれてC840mまで続いている。終点は20m位の広い壁滝になっているが、雪渓上から取り付けない。右からトラバースで越えるとまた雪渓。今度のは900m屈曲点を過ぎC970mまで。4m×3段の連滝を越えると長大な雪渓が一直線に延びている。C1150mまで、長さにして600mはあろうか、上部は急激に傾斜を増し障壁で終わっている。まるで残雪期の芦別本谷じゃないか。

滝で合流する1100m二股を右に入るのだが、シュルンドが大きく取り付けない。少し雪渓を上がり、中間尾根に向かってシュルンドを跳越すが、けっこう怖かった。少し登り懸垂無しで沢に降りると連続した滝となり、沢登りらしくなる。

1250m二股を右に入り小滝を登るとカール底に出るが、ブッシュは濃く視界はあまり利かない。流水溝を見つけてカールバンドをよじ登るがやっぱりブッシュは濃い。ここは素直に沢詰めし、最低コルを目指した方が良さそうに見えた。

 

C1580m付近の国境稜線に飛び出す。P1823頂上から南にコイカク、P1839、北に勝ポロ、札内。正面にカムエクがコイボク側の全景を見せすばらしい立ち姿だ。

明日の天気は気になるが、コイボク三股に降ることにし、国境稜線を北上する。C1737mから北の踏み跡はヤブが濃い。今村、林MパーティーはC1602mから容易に下降したと報告しているが、我々は1573mコルからまっすぐ下降する。C1450m辺りまではひどいヤブの急斜面で、浅い沢形に入ると間も無くナメ滝状に変わる。C14001200m間は5m位の滝のクライムダウンが連続し、難しくはないが緊張が続く。そこから先はガレと河原になるが、三股到着直前から雨が降り出した。

三股対岸のテントサイトは河床からそう高くはないが、まあ心配ないだろう。雨は、ほぼ一晩中降り続く。

 

C1発05200610 C750m二股−0830 C1250m1010稜線−1110 P1823 11501330 C1573コルより下降−1550 C820m三股C

 

7月30日

 朝4時、起床すると沢水は濁り、白く泡立ち増水していて渡渉不能。間も無く雨は止んだので、とりあえず9時まで様子を見ることにする。所々雲の切れ間も見えるようになり、徐々に水は引いて濁りも少し抜けたが充分ではない。1602に向け撤退かカムエクに向かうか決断の時だ。千葉さんは「行きたい」と言う。

この状況であれば目前の三股の渡渉さえできればあとは何とかなりそうだ。一方、1602へは何回かの渡渉がありガレも緩んでいる可能性がある、う〜ん!悩むぜ。時間ギリギリまで、もう1時間待つことにする。さらに水位が下がり何とか行けそうだ。

 

C900m二股までくると水量も危険レベルを下回ったことを実感する。C1000m手前に雪渓があり、その先のゴルジュ状には悪そうなスノーブリッジがあり右岸を高巻く。小さな支尾根を乗越す大高巻きとなる。降りたところはC1030m、大きなナメ滝の上だった。小さなスノーブリッジをくぐったり、側壁をへつったりして進むとこの沢の核心部C1200m二股だ。二つに分かれた雪渓があり中は15mくらいの滝、沢通しには行けない。雪渓左岸のベルクシュルンド内から側壁の岩を登ろうとすると「ドシーン!」と雪渓が崩壊する音が左股上方から聞こえる。「戻れ!」と千葉さんの声、左股からはスノーブロックが落ちてきている。どこが崩れたんだろう?

改めてシュルンドから岩壁を登り、トラバースし右股に入る。すぐに左股へ乗り越したかったが悪場に出そうなので、右股を少し登ってからにする。右岸の傾斜の強いルンゼに取り付くが、これが下から見るよりはるかに悪かった。途中からロープが欲しくなったが、アンカーは取れず両手を離せるテラスも無い。高さ約100m、岩と草付きのルンゼで潅木はほとんど無い。上部は垂直に近く一部W級程度を感じる難しいものだった。抜け落ちる泥スタンスに歯を食いしばり、結局、中間尾根まで追い出されてしまった。そこからやや降り気味みにC1400mラインをヤブ漕ぎトラバースすると核心部は既に足下だった。

間も無く沢がひらけ、コイボクカールに到着、霧の中でテン場を探しガレの下にテントを張る。お互いの健闘を称え握手のあと「ああ、酒が水割り1杯分しかないなあ」と言ったら、千葉さんがニヤリとして「もう1本、あるんだよ」と言う。

「えらい!千葉さん」コイボクカールの水割りは美味かった。

 

C2発10101135 C1030m1420 C1400m1530コイボクカールC

 

7月31日

三佐川パーティーはどうしているだろう。無理するようなことはないだろうが、と言うより、心配されてるのはきっとこっちだろうな。

霧雨のなか出発。急な雪渓を登り、ハイ松を少し漕ぐと頂上手前の稜線C1900mに出る。雨は止んだが、早々とカムエク頂上を後にし下降開始。降るほどに視界も良くなり、コルからは八の沢全体が見渡せる。何回か無線を出すが三佐川パーティーとは連絡が取れず、携帯も使えなかった。

八の沢カールには人っ子ひとりいない。千葉さん曰く「近頃の学生は何をしている」

 

八の沢の下降では左岸の巻き道の標識を忠実に追うが、どこで失敗したのかヤブ漕ぎに追い込まれる。ひとつ滝をクライムダウンし、再度ヤブに入ると踏み跡にぶつかった。三股下には長さ200mはあろうかという長大な雪渓が残っていた。

札内川本流も少し増水していて股下くらい、杖を使って三本足で慎重に渡渉する。林道の降りは自転車で快調だ、急ぐ必要はない。

 

C3発06150700稜線−カムエク頂上07150810八の沢カール−1015三股−1205八の沢出合い−1400七の沢出合い

 

参考グレード 七の沢(雪渓多すぎ、評価できず)、1573下降沢 2級下、

コイボク本流 3級   

 

 今回の沢は雪渓とヤブ漕ぎに終始した感がある。快適な遡行とはいかなったが、悪条件のなか、当初の計画を完遂することができ印象深いものとなった。特にコイボク本流は千葉さんの粘り勝ちというべきだろう。我々の下山を確認するまで新嵐山荘で現地待機してくれていたBパーティー(三佐川、柏本、上田)には感謝している。

 

 (金澤弘明)