赤岩二題

2月24日 蒼氷ルンゼ
  
L田中 小野睦


 記録するほどの登攀でないが、あまり報告がないし、
実は自身面白いクライミングが出来たと思うので報告する。


 スカイリッジ登攀の予定が、間違えて蒼氷ルンゼに入ってしまった。
 雪が少なく記憶と全然違って見えた。
 しかし戻ることは可能だったし、ルンゼをトラバースすれば赤黄ガレに修正も可能だったが、
前方にまさしく青い滝が見える。
 何となく「あれを登らずしてどうするよ」と思う。
 来週でもスカイリッジは登攀可能だろう。
 予定を変更する。

 蒼氷ルンゼなんて大したルートでないだろう、と思うかもしれないがまんざらでもない。
 白い回廊の様、妙な風景だ。
 不思議な気持ちでルンゼを登り、青い滝まで行く。
 例年ならばこの時期デブリで埋まっているのだろうが、今年はそうではない。

 ビレイ地点はボロボロでハーケンが入らない。
 小野睦氏にスタンディング・アックス・ビレイをお願いし取り付く。
 大した傾斜でないと思ったが出だしは垂直であり、しかも予想に反し氷は薄い。
 バイルを叩き込むと氷下の岩にはね返される。
 スクリューなんて効かないし(持ってないけど)壁はボロくてハーケンなど入らない。
 15m登り核心を超え、やっと小アングルを打つ。

 出口もまた面白い。
 チムニー状をバック・アンド・ニーで超える。
 50m一杯ザイルをのばし立ち木でビレイ。
 ここから30m登りリッジでザイルをたたむ。
 あとはズボズボと春のラッセルで赤岩峠に戻る。

 翌週は登れなかったと思う。
 このルートは時期によってグレードがまったく変わるだろう。 



3月3日 スカイリッジ・ダイレクト  
L田中 小野武 柏本 山本瞳


 蒼氷ルンゼの翌週に来る。
 ルンゼの下部でアイゼンを装着するが、ベタベタの雪で登りにくいことこの上なし。
 下部のリッジは雪がついていなくて省略。

 無名岩下部から右へトラバースせず、人工でダイレクトに登攀するのが今回の目的。
 山本瞳(名前がアイドル風)は、今回が初めてのアイゼン&アブミ登攀。
 彼女の不運をお察しするがもう手遅れ。
 私のテープ・アブミを貸すが、カッシー、小野武両氏から「もっとまともなアブミを貸せ!」との非難。
 2セットもアイゼン・アブミ持ってないがな。

 1P目:初登者に敬意を表し残置ボルトにアブミをセットする。
 4本目のハーケンのアゴが効いてないようなのでハーケンを打ち足すが、
なかなか入らずアゴが効かない。
 しかもフォローも回収不可能、役たたずなハーケンを残した。
 人工からフリーとなる部分はいつも緊張する。
 左からブッシュ帯に入り立ち木でビレイ。(35m3級-A1)

 2P目:下から見ると傾斜は緩そうだが、バンドに立ちこんだ所でそうでないと悟る。
 残置ハーケンは人工用だ。
 右のバンドへトラバースするフリー部分が面白い。
 このバンドでもう核心を超えたか、と思ったがここからが最大の核心であった。
 「うぇ〜」スラブである。
 私の技量ではフリーで越せない。
 ナッツ7番に泣く泣くアブミをかける。
 この先はダブル・アックスで稜線まで進む。
 山本瞳(売れないアイドル風)は難なく登ってきて大変面白くない。(50m4級‐A1)


 岐路は電波塔から車道をトラバースなどして適当に赤岩峠まで戻る。

(田中 規雄)