須築川遡行

2008.9.13n〜15(16日予備日)       L渡邊 M中西、田中

 

 須築川には特別な思い入れがある。初めて山頂より見たときは渓谷の間に雲が詰まっていて幻想的だった。家に帰って調べてみると難しい沢だいうのがわかりドキドキしたのを覚えている。

 今回連休を中西と須築川遡行と決めたが、そこは新人たち。各方面より計画の見直し・再考を勧められる。当然である。自分なりに情報を収集すればするほど難しい沢だと認識はしていた。が何も無ければ抜けられるとも感じた。しかし緊急事態時の対応力は不安が付きまとう。むぅ…、それでも冒険はしたい。

 予備日の設定と田中氏参戦とのことで承認が降りる。燃える俺。

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 千走新道に車をデポ。中西と呑みながら須築橋C0で田中氏を待つ。21時半ごろ田中氏着、「私、一杯飲んで寝ます」、と一言、お疲れ様です。

 

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 4時起床、全然暗い、5時行動開始。Co40の砂防ダムまでは林道がある。その後は広い河原を歩く。後で不安にならないよう枝沢を一本ずつ丹念に確認する。一時間半程の枝沢出会いで一本立てる。クリームパンの消費期限を見て自分の誕生日を知る。クリームパンの消費期限だけしか俺の誕生日を知らないのか。

 悲しさは泳いで打ち消すべし、何度か楽しく渡渉する。Co220分岐、先行する中西が果敢に泳いで本流を突破…してはだめで左の沢に入る、と言う声は流れに吸収されてなかなか届かず。水量は等しく支流は一見本流のように見える、が見かけにだまされてはいけない。ここからは泳ぎや胸まで浸かることが多くなる。Co300正面に10m滝。釜の側壁に幅1mほどの路地状の狭い函がある(山谷の写真アレです)。渡邊、ロープを持って泳いで突破…するも結局は軽くひとかき程度の深さだったので興ざめ、実は楽しみにしていた箇所だったのです。後続も興ざめだが面白いには違いない。時折、尺イワナがバシャっとはねてビビる。

 Co350チョクストーンの滝は左岸の隙間の狭い洞穴に潜りこみ地上に這い出る、狭くてザックがひっかかるのでザックははずして登ったほうが良い。もはや洞窟探検的、おもしろくて田中氏も珍しくニコニコ。途中硫黄泉や鍾乳洞地形を横切る。

 そんなこんなでCo420の柱状節理の二股、一本立てる。ここから核心部のS字峡が始まるのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

                        ←洞窟から這い出るトコロ

 

F110m滝、直登不可の第一の核心部だ。左岸ルンゼを詰め側壁を攀じるのがライン。渡邊、葛藤あり。「核心をリードしたい」という気持ちや「安全且つ確実に須築を抜けるためにはパーティーの中で一番安全に上手行ける人に任せるべきではないか」、「だからといって田中さんに頼ってばかりじゃダメだじゃないか」と滝を見上げながらラインを考えて、ふっと後ろを振り向くと田中氏が既にトップで行く用意をしている(轟音で金具の金属音聞こえず)。多分、そんな俺の考えを把握して「私が行きます」的な雰囲気を作りだしてくれたんだべか?(渡邊想像)。左岸壁田中氏リード。

F2F1を登ったあとの左岸テラス状から3m程クライムダウンするとF2の釜だ。テラスからはラインは見えないF1F2とまとめて大高巻きするのかとも思うが、滝の直下に行くと左岸をへつるラインがある。

F3F5は快適&楽しいですが、よく覚えていないと言うのが本音です。

F6F5を右岸よりあがると、直登不能な釜持ち4m滝が見える。右岸のラインは途中で無いし左岸はかぶっている。「記録では、右岸を6m程あがって斜めに懸垂し…」と言いかけてる間に田中氏がササっと登り残置支点発見。斜めに懸垂し、滝の落ち口に降り立ち攻略。

F7:通称ヤカンの底…である。左岸を登るのだろうが渡辺、葛藤あり…(以下略)、誕生日だから…ハイライトだから…残置ピンはあるし…後ろを振り向くと田中氏すでに登攀用意の最中。小休止後スイスイ登る田中氏。セカンド渡辺、登る、傾斜が緩くなったところで田中氏のザックを引き上げる、途中でザックつっかかったので後は中西が登ってきたときに回収してもらうことに。傾斜が緩くなると今度は砂が岩に乗ってて滑りそうで少しドキドキ。

F8:チムニー状の滝は水流が激しいので右岸の涸れ滝チムニーを登る。

F9:チョックストーンの滝、今度は水流は免れない…と思ったら右岸にアンダー気味のクラックが走っており、中間支点にナッツ&カラビナあり、なんとなくみんなトライしてみるも不可と判断。なんであんなところにあるんだろう?水流が激しい時に仕方なくそこから攻めたのだろうか?回収不可能のナッツは何らかの困難にぶつかったパーティーの状態を想像させるに十分だ。そんなナチュプロ使うのはきっと上級者であるはず()だがいったい何があったのだろうか?沢はいろんなことがあるのだろう。恐ろしい。各自、空身で挑むメットにビチビチと音をたててあたる水流が頭を押さえつけてくる。直瀑を浴びつつ這い上がるが困難ではなく快適と言う表現が正しい。

F9を越えるとCo570二股だ。ここをテン場にするパーティーも多いらしいがまだ1300ですぜ、ダンナ。行動終了するのには早いっしょ。二股を左にとると問題のF10だ。問題と書いたのには理由がある。

 

108m程のハングしている、前人未登の滝だろう。当然巻くのだが巻くのは怖い。ルートとしては…

@左岸:滝手前より直上し高い位置での長いトラバースを強いられるだろう、突っ込んだら最後、かもしれない。途中で引き返すのも危険は伴いそうだ→×。

A右岸:草付き、ルンゼ状をある程度詰めて、最も適当なラインをみて草付きの尾根状を乗り越し懸垂するってな感じ→○妥当な線でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

↑S峡字開始           ↑ヤカンの底             ↑ツッパリ田中氏

 

今回の遡行について情報収集したこのF10は中で一番の不安箇所だ、なぜならあるパーティーは20分程で抜け、特筆すべきことは何も書いてない、またあるパーティーは一時間半ほど苦戦し困難を強いられている。なぜだ?この時間差は何だ?

 見た目はそれほど困難ではない、ルンゼを中間ほどまで上がって田中氏が草付き斜面に取り付く、一応ロープをつけてってもらう&ダブルアックスで行ってもらう。

少々待つ、田中氏スベリ降りてくる。「ダメだ、岩の上に砂が5cm位のっている感じでバイルも意味ねぇ」とのこと。しかしここで引き下がる田中氏ではない、おもむろにザックから軽アイゼン取り出す!装着する、登る、恐れ入ります。豊かな経験に。

 セカンド渡辺登る、草を束ねてランニングをとってあってビックリした。このズリズリすべるところでこんな支点作業を冷静にこなすのはすごい。ロープが足りないので渡辺登りつつ後続の中西も同時に連結したロープで登る。登った後は懸垂、ブッシュがあって深さは不明だったが1ピッチで降りられる。結局1時間半くらいかかった。

 たぶん、推測だがルンゼに雪渓が詰まっている年もあり楽に抜けられる時もあるのだろう、突破時間はそれに因るのではなかろうか。

 

 すぐF11:ラインは左岸、立っているように見えるが泳いで取り付くとホールドはイイ。

12:すぐF11ニシキヘビみたいな模様の側壁に

囲まれて美しい。何度も登りたい。

クラックに手を突っ込み気持ちイイ。

ニシキヘビ滝→

 

13:右岸にラインあり。泳いで取り付くが体が

あがらず手前より側壁をへつって滝右を直登。

いつの間にか明るくなってきた沢をしばらく行く

と最後は18m大滝だ(二段、15mと3m位)

渡辺葛藤あり…(以下略)

快適に直登できるとのことだが途中の緩い傾斜は

簡単そうだが砂が乗ってそうだ、最後の3m程の壁

は悪そうだ。巻くのは論外だが場合によっては…。

 「田中さ…」(渡邊)、「カチャカチャ……ハイ?」(田中)。もうすでに用意してましたか、小休止後登る田中氏、滝つぼより少し離れた右岸カンテ状側壁より取り付く。一段目登ったところでハーケン打つ。二段目3mも難なく登る。滝を乗り越し見えなくなった。ザイルはいっぱい。だがグイグイ引っぱらさる。「あと少しで木にたどりつくぞ、もう少し前行ってやれぇ」と背後の高台に登った中西の声が滝の轟音に混じってかすかに聞こえる。滝つぼに腹まで浸かりながらビレイ、これ以上はツライのですのよ、旦那ぁ。

 上方より「×××!」とコールあり、登る。快適だが寂しい気分もある。

気持ちよく登ると後はテン場探し。なかなか適地は見つからず。やぶの中の平らな場所を刈り倒して整地。暗くなってくるにつれて冷えてくる、息も白い。でも満足だ。シェラフカバーは凍える、誕生日だからシェラフ持ってくれば良かった。でも満足だ。

  翌朝、快晴。この沢が終わってしまうと思うと心裏腹で寂しい。水は伏流となりやがて乾いた白い玉石のみとなる。小休止は眺めの良いところでとる、眺めの良いところとは渓谷が見渡せるところだ。少し悲しい。沢形を詰めて軽く漕ぐと頂上の西側の夏道だ、5分後の狩場山頂、誕生日記念に大きな産声を山頂で咆哮(かま)してやった。

 

反省点等

・ヒント… 3本沢はザイル402本は必要(田中氏より)

草付きに軽アイゼンは良い、価値ありと見つけたり。

・課題:来期に向けて登攀力をつける。数を登ってメンタルも強化。

 

良かった点

@積極的にロープ、スリングを出した&出してもらった。フォローが手こずる時間は惜しいし安全第一。もちろん状況にもよる。

Aルート研究。地形図を暗記。情報収集もした。(冒険的要素は薄れるがなんとしても抜けたかったので)。結果スピードは上がった。

B帰り道、ドラゴンウォーターにて鉄分補給(天然炭酸水)は必須。強くなるよ。

  

9月14日 

5時行動開始Co30→6時50分熊追の沢分岐Co155→8時20分Co300二股→

10時20分Co420二股→10時45分S字峡開始→12時45分F7ヤカン終了→

13時40分ハングの滝着→15時00分ハング滝終→16時10分20m滝→17時45分Co900幕営

 

9月15日 

4時起床→5時30分行動開始→8時25分狩場山頂着→10時45分新道車場着