7月の芦別岳

旧道〜夫婦岩(北西壁ダイレクトルート)〜本峰(西壁ダイレクトルート)〜新道

L柏本
M

 現在の北稜クラブを代表する体力馬鹿(失礼)三佐川山行部長をして、
「終わった後1週間以上調子が悪かった」と言わしめた「チャレンジ羊蹄山」の翌週。

 まだまだ未熟な自分と新人谷の二人での芦別岳。
 本当だったら本調子には戻っていないはずだが、緊張感のお陰か気力は充実しきっていた。
 

 

77日(金) 曇り 一時雨?

 

 太陽の里駐車場へ向かう車内、
 前夜の山行部会で「芦別岳は北稜クラブにとってはゲレンデも同然」との意見が飛び交っていたので、
 谷に「それは我々には当てはまらない」と力一杯言い含める。

 僕自身芦別に来るのは
4度目だが、その何れも先輩の後ろを歩いて来た山行に過ぎない。
 気を引き締めて行かんとやられる。


 だからって何も悪天候の兆しを見せることないのになぁ。

 

◆参考タイム◆ 7/7 18:45 札幌発 21:35太陽の里C0 22:00就寝

 

 

78日(土)曇り ガス 一時雨

 

 なんとなく眠りが浅かったが、きっちり4時に起きて動き出す二人。
 旧道登山道は年々悪くなっている気がする。
 それとも前夜の小雨で増水しているせいだろうか?
 草木は濡れ濡れで、服がビチャビチャになる。
 雨具を着なかったのは大失敗。

 夫婦岩分岐から、夫婦岩は初めての谷にルートファインディングを任せてみた。
 時間もあったので、間違えても一切口を出さない覚悟だった。
 …そしたら見事に間違えてくれた。
 夫婦岩へ向かう尾根へ強引に取り付き、そのまま夫婦岩北東側の基部へ辿り着く。
「さてここからどうする?」
「とりあえずここを登って向こうへ抜けます!」
 男らしいにも程があるので、さすがに止めた。

 北峰の基部を半時計回りに巻いて行き、無事目的通り北西壁ダイレクトルートの取付に辿り着く。
 岩の状態は濡れているようで、太陽の光も挿して来ないままだが、
「こんな状態で取り付かんようではアルパインクライマーにはなれん!」とよくわからん論理を並べながら準備する。
 最低限の荷物以外はデポ。

 

 1P目柏本リード。
 昨年
10月大原氏と来て雨の中フォローした部分だ。
 「山谷」を参考にしてこの日の為に(?)キャメも用意してきたが、使わずじまいで無事終了。

 2
P目は谷リード。
 このままつるべで登っていくと、ちょうど難しいピッチが全部自分に回ってきてくれる。


 3P目は4級A1
 
3月に登攀のY氏と来た時にはユマールで上がらせてもらったところだ。
 ということはまともに登るのは初めてか。
 4級
A1だし、最悪なんとかして上がれるだろうと、アブミやフィフィなどフル装備だ。
 もちろんフリーでは
5.8らしいので、密かにフリーで登ってやる気満々ではあった。
 が、取り付いてみると岩の濡れ具合の酷さ、1
P目と争う程だ。
 1
P目はそれでもクラックの中なので思いっきり身体を押し付けて何とか誤魔化したが、
ここではジェードルから外へ出るところが最も悪く、弱い僕はあっさりフィフィに体重を預ける。
(持っていくから使っちゃうんだよ、という批判は甘んじて受けます。)
 でもホールドを良く探ればそんなに難しいわけでもない。
 心を落ち着け、気合を高めながら無事登りきる。


 4
P目のデルタ草つきは谷に任せる。
 ランニングが取れず、ちょっと心もとない雰囲気を醸し出していたが、特に危なげなく登っていた。
 草つき部分は夏の方が気持ち悪いと、今日はじめて知った。


 5
P目、いよいよ最後のピッチ。
 岩の脆さはここが一番だった気がするが、特に問題なく終了。
 ロープがギリギリだった(何せ48mザイル)ので最初に出てきた大きな気でビレイをとり終了。


 終了点からは念のため1ピッチ分だけザイルを出す、が特に必要なかったようだ。
 谷は懸垂下降の練習をしたかったようだが、このルートを選んだからには北方ピークに立たねば勿体無い。
 と、ピークに行くが濃霧の為南峰が見えません。
 いいんだよ、自己満足なんだから!


 北峰ピークからは中央ルンゼに下降。
 この辺りは全く来たことも無く一見危なそうだったので懸垂してみたが、どうやらこれも必要なかったらしい。
 中央ルンゼ内でも2箇所支点があった為、練習を兼ねてラペル。
 2つ目の支点はリングボルトが一本抜けており、「残置とは信用してはいけない物」の見本になっていた。
 更にここでも練習を兼ねてハーケンをうち、残置支点とする。
 一人頭
300円の授業料也。

 

 北峰基部に戻ってからは水の豊富なこのあたりに幕営の予定であったが、
日没迄かなり時間があったので、「水場が無いのを覚悟で、本峰基部まで行かないか?」と僕。
 テストが近い学生は快諾。

 途中
4ピッチ目らへんから見えていた雪渓で水を汲み、旧道へ。
 ガスのせいで本峰の姿はさっぱり見えない。
 今日の分の行動食を食らい尽くし、「明日の分歩いているのだから」と自分に言い訳しながら翌日の行動食に手を出す柏本。
 谷は谷でそこら辺に生えているアイヌ葱を食って力をつけようとしている。更に柏本、下りの道で何度か転んで足を捻ってしまう。
 羊蹄山の疲労がこんなところで出てきたのか?
 その後、何度もガスの中の偽ピークに騙され、本峰直下のキャンプ適地に辿り着いたのは日没間近。
 約
14時間行動か、疲れたな。

 

◆参考タイム◆ 7/8 4:00起床〜4:45旧道登山口〜6:12 ユーフレ小屋分岐〜7:06 夫婦岩分岐〜8:25 夫婦岩北東側基部 9:15 夫婦岩北西壁ダイレクトルート取付〜10:10 登攀開始〜13:00 登攀終了大休止〜13:30出発〜14:00 北峰ピーク 中央ルンゼ下降〜15:45 夫婦岩基部〜16:05 本峰へ向けて行動開始〜18:50 頂上付近のキャンプ適地着 幕営〜20:30 就寝

 

 

7月9日(日)曇り ガス 快晴

 

 昨日頑張って歩いたので、今日は起床時間を予定より1時間遅らせる。
 ゴアライト
Xの中は結露が激しく非常に不快。
 また、シュラフの中も濡れ濡れで気持ちが悪い。
 二人で一つの神α雑炊を食すが、食べ盛りの二人には物足りない。
 
30分程で本峰ピークに着いた時にはもう行動食を食べ始めていた。

 天気はまだ半分ガス、だが快晴の兆し。
 ブロッケン現象でしばし遊ぶ。写真に写らないのが残念!
「先日の赤岩と言い、なんか最近濃霧に付きまとわれるな」
「さすが柏本さんですね!」
 言うじゃねぇか、谷。

 

 登攀具と貴重品以外を頂上にデポし、雨具を着込んで西壁基部へと向かう。
 取り付きの特定にちょっぴり手間取ったが、ダイレクトルートらしきラインを探し出し取り付く。


 1
P目は谷リード。
 やはり湿った岩と浮石にビビリながらもなかなか安定した登りを見せる。


 2
P目柏本。
 やはり濡れて、ボロボロで感じが悪い。
 余りにも感じ悪かったので(←自分への言い訳)思わずランニングのヌンチャクが短め短めになっていく。
 ザイルの流れには気をつけたので大丈夫だったが。
 核心部で行ったり戻ったりしてると、右足スタンスの岩が浮いて揺れている。
 気持ち悪い。
 思わず
A0してしまった。
 ここは人工のルートではないのに、情けない。
 しばしオタオタした後叫ぶ。
 「行くぞ!」
 無論半分以上は自分に向けた激だ。
 終了点では残置の支点が発見できず、ここで初めてキャメ
2番を使いビレイを取る。
 殆ど無理矢理のデビューだ。
「早く登れたらもう1ルート行こうか!」
 そんな勢いはどこへやら。
 予定よりも登りきるのにずっと時間がかかったので、今日はこれで閉店。
 後は新道を下山するだけにしよう。 

 

 新道下山は羊蹄チャレンジャーのノリで2時間ノンストップ。
 下山時のみ快晴に恵まれるあたりに、自分の雨男たる真骨頂を見たような気がする。

 

  参考タイム

7/9 4:30起床〜5:25 出発〜5:55 芦別岳頂上〜7:10 登攀開始〜8:45 登攀終了〜9:15下山開始〜11:15 新道登山口下山

 

<総括?>

 北稜クラブでは何度も登り尽くされている、珍しくも何とも無い流れの山行計画だった。
「北海道の山と谷」もフルに活用したし、岩場には残置ハーケン、ボルトが連打されていた。
 だが、ガイドブックを片手にとは言え、初めてのルートを探しながら取り付き、
リードするのはやっぱり気持ちのいいものである。
 まして、それが自分と後輩
2人だけだと、芦別と言えども緊張感を味わうことが出来た。

 二人共通の課題として、今後も初見で沢山のルートを登る必要がありそうだ。

 

おまけ

 ジャンケンに負けた谷君、新道登山口を1125分出発〜1155 旧道登山口から柏本車を回収し、新道登山口へと凱旋。

 

余談

 この山行の後、緊張の糸がプッツリ切れた柏本。右足首の捻挫も手伝ってやや無気力な一週間を過ごす。

 海の日の連休で充電しなおして、沢例会プレ山行には完全復活を遂げなくては…。


<もう一つの芦別岳へ>